本書は、大道芸人としても知られる、数学者ピーター・フランクルが、12ヶ国語をマスターした経験をもとに、少年少女を対象に、外国語を習得する方法を解説している、岩波ジュニア新書からの1冊です。
(1) いま活躍中の多言語習得者の生の声が聞ける!
かつて、生涯に10数ヶ国語を習得したシュリーマンの「古代への情熱」を読んで、こんなすごい人もいたんだ、と大いに感心し、勇気づけられもした、という話は、このブログでも書いたことがありました。
フランス語を学ぶ上での、数々のヒントも、もらいました。
しかし、それは、実話とはいえ、100年以上も前に生きた人の話であり、どこか現実味に欠ける面も否定できませんでした。
その点、本書は、ちがいます。
著者のピーター・フランクルは、NHKの教育番組などで、わたしも、何度か目にしたことのある、いままさに活躍中の、世界的にも有名な数学者であり、かつ、多言語習得者でもあるのです。
もっとも、わたしは、恥ずかしながら、この本を手にするまで、彼のことを、数学者だけれど大道芸もする、一風変わった外国人タレント、といった程度の認識しか、持ち合わせていませんでしたが・・・。
本書によると、ピーター・フランクルが、大学で数学の講義ができる程度に習熟している言語は、母語であるハンガリー語および英語、ドイツ語、スウェーデン語、フランス語、スペイン語、ロシア語、ポーランド語、日本語、韓国・朝鮮語、中国語の、11ヶ国語だそうです。
そのほかに、インドネシア語も少しできるとのことで、結局、彼が話せる言葉は、ぜんぶで、12ヶ国語になるとのことです。
本書は、少年少女を対象とした岩波ジュニア新書ということもあり、やさしい平易な日本語で書かれています。
そのため、たいへん読みやすく、195ページほどの内容も、小一時間もあれば読み終えることができます。
「英語のたくらみ、フランス語のたわむれ」を読んだときのように、胸の中で血がぐつぐつと燃えたぎるような興奮こそありませんでしたが、読みながら、ところどころ、うんうん、とうなずきながら、メモを片手に読み進めました。
といって、とくべつ目新しい斬新な方法論が語られているわけではありません。
しかし、実際に12ヶ国語をマスターした人の口から語られる言葉は、どれも、ひとつひとつ説得力があります。
自分と同じ学習法を見つけて、自信を深めることもあれば、逆に、自分とは正反対の学習法を見つけて、自分のやり方を再検討してみる、ということもありました。
とりわけ、かつて読んだ、シュリーマンの方法論と相通ずる面が多く見られたのは、印象的でした。
わたしは、たまたまフランス語の学習にくじけそうになったときに本書を読んで、目の前がパアッと明るくなり、新しい気持ちで再スタートを切ることができました。
いま活躍中の多言語習得者の生の声が聞ける、格好のテキストです。
(2) 本書の目次
第1章 ぼくの外国語遍歴
1 ドイツ語
@ ドイツ語をはじめたきっかけ
A 最初のつまづき
B 三週間ドイツ語づけに
C 原語で読む
D 自分なりの方法を確立
2 ロシア語
@ 学校でロシア語の授業はじまる
A 「母語」と「母国語」
B 思わぬ道が開ける
3 スウェーデン語
@ 教科書を何冊か使う
A ポルノ雑誌で読解の訓練
B スウェーデンという国
4 フランス語
@ 偶然の出会い
A 別荘にこもる
B フランス留学
C 達成しやすい目標をたてる
5 英語
@ あこがれの国の言語
A 戯曲を読む
6 スペイン語
@ 美人教師に出会う
A 語学習得のコツをまとめると
B 不思議な出会いに導かれて
第2章 外国語を学ぶ目的とは
@ 外国語は情報への窓
A 情報って何
B 情報を得ることの大切さ
C 国際言語としての英語
D 外国語を学ぶメリット
E 「受信型」と「発信型」
F なぜ人間は生きるのだろう
G 日本人の生き方
第3章 語学の才能って何?
@ じつは日本語が大事
A コミュニケーションが好き
B 集中する才能
第4章 ぼくの体験的記憶術
@ すぐ使ってみる
A 自分の単語帳をつくる
B 言語の発想法を楽しむ
C 相手の口癖を覚える
D 同じグループの単語は同じ引き出しのなかに
E 自分のイメージを単語にくっつける
F 状況といっしょにまとめて覚える
G 脳のハードディスクに記憶する
第5章 時間の有効活用法
@ 環境づくりを大切に
A むだな時間を有効に使おう
B 通学・通勤の車中で
C 外国語で考えるということ
D 勉強時間は集中して
E 読む、書く、聞く、話す−四つのポイント
F 日々のつきあいのなかで
G バイトは時間のムダ
H 時間の使い方をチェックする
I 留学生に習おう
J ぼくの短期留学
第6章 やめてほしい日本人のまちがい
@ 翻訳はやめよう
A 文法偏重はやめよう
B カタカナは害
C 日本人だけでかたまるな
D まちがいを恐れるな
E 無理してむずかしいことを言うのは逆効果
F 高すぎる目標は挫折のもと
G ていねいすぎるのは考えもの
第7章 日本語を磨こう
@ 西洋言語化する日本語
A 自分の意見をはっきりともつ
B 討論のすすめ
第8章 国際人になるために
@ 国家と国民のちがい
A 自分の国への愛情とは
B 国のなかの一個人をどう考える?
C お上と市民のあいだ
D 歴史の見方
E 英語ができるだけでは国際人ではない
F 国際人がとるべき態度
G 留学のすすめ
H 先入観にとらわれず、オープンマインドで
I 中国語を学ぼう
(3) 参考
■ シュリーマンの多言語習得法