![]() | 63歳・東京外語大3年老学生の日記 坂本 武信 産経新聞出版 |
30歳を過ぎてから、うっかりフランス語などに手を出してしまったわたしを、時おり悩ませていたのが、いまさら、こんな風にフランス語の独学をコツコツ続けていっても、本当にモノになるのだろうか、という漠然とした不安でした。
もうちょっと若いときに、フランス語と出会っていれば・・・。
そんな不安を、見事なまでに吹き飛ばし、たくさんの勇気を与えてくれたのが、この「63歳・東京外語大3年 老学生の日記」という痛快な本でした。
本書は、59歳で会社を退職してから、東京外国語大学に入学し、そこで、ゼロからポーランド語を学び始めた、坂本さんという方がお書きになったエッセーです。
全体は、大きく3部に分かれていて、第1部が大学生活、第2部がポーランドでの生活、第3部がその他、という構成になっています。
何よりわたしを勇気づけてくれたのは、59歳という年齢で、まったくゼロから始められた坂本さんが、あれよあれよというまに、いっしょにスタートしたはずの現役大学生も真っ青になるほど、ポーランド語を上達させていく、歴然たる事実です。
33歳からフランス語を始めたって、ぜんぜん遅くなんかない、わたしだって、まだまだやれる、と元気づけられました。
と同時に、これまで、心のどこかで、年齢を言いわけにしてきた自分を、とても恥ずかしく思いました。
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ところで、坂本さんがポーランド語を学ぼうと思われたきっかけは、わたしがフランス語を始めたきっかけと同じくらい、あるような、ないような、あやふやなものです。
とくに、大使館で行われた弁論大会で、6人のポーランド人審査員を前に、坂本さんが行ったスピーチは傑作でした。
「私は58歳のとき大病をして死にかかり、退職したが何もすることがなかった。その時、たまたまインターネットで大学のポーランド語社会人講座を見つけた。それがポーランド語に出会ったきっかけで、別にポーランド語でなくてもよかった。」
とりわけ、最後の「別にポーランド語でなくてもよかった」というフレーズに、わたしはしびれました。
というのは、かつて当ブログで、「行き先がローマだったら、今ごろ、イタリア語を勉強していたかも知れません」と書いたことがあったように、「別にフランス語でなくてもよかった」という思いは、わたしも、まったく同じだったからです。
そして、実は、この動機のいいかげんさも、33歳という年齢とともに、わたしが自身のフランス語の独学を危ぶむ、隠れた要因のひとつでした。
しかし、そんな、とかく弱気になりがちなわたしに、きっかけなんて、何でもいいんだ、ということを、身をもって坂本さんが証明してくれました。
ちなみに、先ほどのスピーチにはちゃんと続きがあって、決して、ポーランド人審査員の心証を損ねかねない、あのフレーズを言い放ったまま、坂本さんがスピーチを終えたわけでないことは、坂本さんの名誉のためにも、ひとこと付け加えておかねばなりません。
いずれにせよ、何となく大学でポーランド語の学習を始めることになった坂本さん。
しかし、いつのまにか、先述の弁論大会をはじめ、文化祭のポーランド語劇に老医師役で出演されたり、はたまた、ポーランドに何度もお出かけになったりと、おそらくご自身でも予想されていなかったほどに、活躍の場を大きくお広げになりました。
そんな坂本さんのご様子を拝見するにつけ、外国語を学ぶ意義というものを、改めて考えさせられたように思います。
さてさて、ここはひとつ、われわれも、フランス語をしっかりと学んで、自身の世界を広げていこうではありませんか。
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【 本書の目次 】
はじめに
<大学生活>
1 退職そして大学へ
・東京外国語大学
・入学式
・思いもよらぬあれこれ
・文化祭
・弁論大会
・鮮明な記憶
2 現役学生になる
・編入試験
・さあ新学期
・授業風景
・目立ちます
・試験
・捨てがたい生活
・女子学生の涙
・親愛なる先生達
3 若い仲間達
・年齢ギャップ
・オタク
・わたしの進路
・服装
・遺影
・若い仲間達
・当世学生気質
<わがポーランド>
1 初めてのポーランド語学研修
・還暦の青春 サマースクール
・ポーランドあれこれ
・フランス男の真髄 わが友ガエル
・キューピッド
2 再びポーランドへ
・ポーランド基礎知識
・ワルシャワの夏
・ワルシャワの聖人
・よく効くお灸
・後日談
・後日談パート2
・ポーランド式結婚
・ポロネーズ
・スープ「ジューレック」
・鉄道で一人旅
3 余談
・マドリッドの休日 ザビエル氏と
・自宅でパエリヤ
4 三たびポーランドへ
・ついに結婚
・クシャミとハナミズ
・ここだけの話
・スイスの青年
・深夜の冒険
・見習い修道士
・若い外交官
<老学生の目>
1 賞味期限
・ご用心
・出世払い
・木登り
・オマジナイ
・同窓会
・賞味期限
2 よ〜く考えると
・ストレス
・マンガ
・化粧
・職業欄
・松竹梅
・続 松竹梅
3 妻と娘と
・夫と妻の間柄
・娘から見た老学生
あとがきにかえて
坂本さんのこと 東京外国語大学教授 石井哲士朗
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